2023年5月3日

医療DXとは?課題や具体的な取り組みを紹介!医療DX令和ビジョン2030についても解説

医療業界が抱える課題を解決するためには、医療DXの推進が必要不可欠です。デジタル化が遅れている医療業界でDXの推進が行われれば、業務の負担が減少するとともに、安定した経営が可能になるでしょう。本記事では、医療業界が抱えている課題を紹介するとともに、医療DXや医療DX令和ビジョン2030について紹介します。

 

1.医療業界が抱えている課題

 労働力不足

 進まないデジタル化

 長時間労働の常態化

 経営難による閉院

2.課題を解決する医療DXとは

 医療DXが推進されはじめた背景

 医療DXの具体的な取り組み内容

3.医療DX令和ビジョン2030の3つの柱

 全国医療情報プラットフォームの創設

 電子カルテ情報の標準化

 診療報酬改定DX

4.医療DXに関するよくある質問

5.まとめ


1.医療業界が抱えている課題 [1]

ここでは、医療業界が抱えている主な課題を4つ紹介します。少子高齢化による労働人口の不足といった社会全体が抱える課題から、長時間労働の常態化といった医療業界ならではの課題まで、さまざまな問題を抱えています。医療DXによる課題解決を目指すためにも、まずはどのような問題が生じているのかを把握しましょう。

 

労働力不足 [2]

近年、少子高齢化により労働人口全体が減少し、社会全体が労働力不足に悩まされています。医療業界も同様に医師や看護師をはじめとした医療従事者の確保が難しくなってきている現状があります。高齢化により医療や介護を必要とする人は増える一方、労働人口は減少の一途をたどると考えられるため、医療の需要と供給のバランスが崩壊してしまうと考えられるでしょう。

 

厚生労働省が公表している「令和5年版厚生労働白書」によると、2020年の65歳以上の人口は3602万人(29%)、20~64歳の人口は6938万人(55%)です。2070年になると、65歳以上の人口は3367万人(39%)、20~64歳の人口は4234万人(49%)と、高齢者の割合が増加し、労働人口が減少すると予想されています。

 

進まないデジタル化 [3]

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表している「DX白書2023」によると、医療・福祉業界でDXを実施していると回答した企業の割合は、9.3%でした。現在実施しておらず、今後も予定なしと回答した企業は78.7%にものぼります。

 

ほかの産業と比較しても大きく後れを取っていることが分かります。現在、病院をはじめとした医療機関では、問診票やカルテ、処方箋、物品の購入手続きなどを、紙をメインとしたアナログ業務で行っているケースが多く、医療従事者の業務効率を低下させる要因となっているのです。

 

長時間労働の常態化

医療業界では、労働力不足やデジタル化の遅れにより、長時間労働が常態化しています。医療業界で働く医師や看護師の労働環境を見直す条件が定められ、2024年4月から労働時間の上限が規制されます。規制にあわせた労働環境を整える必要があり、長時間労働は2024年問題として課題に挙げられているのです。

 

今後、労働時間の上限規制や時間外割増賃金率の引き上げの実施、追加健康確保措置の実施などが義務付けられるため、長時間労働の常態化の改善が求められています。

 

経営難による閉院 [4]

厚生労働省が発表した「令和5年度医療施設経営安定化推進事業 病院経営管理指標及び医療施設における経営管理の実態に関する調査研究」によると、令和4年度の医療法人における黒字病院比率は、一般病院で67.2%、精神科病院で75.2%、療養型病院で68.2%、ケアミックス病院で70.4%でした。

 

平成30年度の報告によると一般病院で76.2%、精神科病院で80.2%、療養型病院で80.2%、ケアミックス病院で74.2%であるため、全ての病院種別において黒字病院比率が減少傾向にあり、経営が厳しい状況にあると推察できます。今後も、病院の経営難が不安視されるでしょう。

 

2.課題を解決する医療DXとは

ここでは、医療業界が抱えるための医療DXとは何かを解説します。医療DXが推進されはじめた背景や具体的な取り組み内容を知り、改善できるようにしましょう。

 

医療DXが推進されはじめた背景 [5]

医療DXが推進されはじめた背景には、先述した課題の早急な改善があります。日本では、少子高齢化が進んでおり、将来安定して暮らせるようにするためにも、労働人口の確保が重要です。また、労働人口の減少により医療従事者の不足も心配されており、国民の健康増進や質の高い医療を届けるためにも、医療DXの取り組みが推進されるようになりました。

 

近年、新型コロナウイルス感染症の影響により、通常時からデータをスピーディに収集するとともに、収集範囲を拡大することが大切であるとの認識が広まり、次なる感染症危機に対して迅速な対策が行えるよう、医療DXによる体制の構築が求められています。

 

医療DXの具体的な取り組み内容 [6]

ここでは、医療DXを推進するために、具体的にどのような取り組みを導入すればよいかを紹介します。無理なく医療DXを進めていくためには、変更がしやすい部分から取り組んでいくことが大切です。

 

オンライン予約/問診

オンライン予約・問診とは、患者さまが自宅からスマホやパソコンを用いてオンライン上で診療の予約をできるようにする取り組みです。病院の受付を担う事務員の負担軽減が期待できるほか、予約枠数を設定することで、来院患者数のコントロールを可能にし、スムーズな診療を促進させます。待ち時間がなくなることで、患者さまもストレスなく診療を受けられるでしょう。

 

また、来院した際に行う問診を、オンライン上で事前に済ませられるシステムも開発されています。受付でのやりとりの時間を削減することで、患者さまはスムーズに診療を受けられるようになるとともに、受付事務の負担軽減も期待できます。

 

オンライン診療

オンライン診療は、コロナ禍で注目された診療方法で、医療DXを促進する取り組みとしても注目を集めています。オンライン診療では、患者と医師がメールやチャット、ビデオ通話を用いて連絡を取り合い診療を行い、診療後は処方薬を患者さまに郵送するのです。現在は、予約から診療、決済までオンライン上で完結できるアプリも登場しています。自宅にいながら診療を受けられるオンライン診療は、感染症拡大のリスクを抑えながら診療が行える方法として、普及が進んでいます。

 

カルテの電子化

医療現場で用いられるカルテや問診票、処方箋などを電子化することで、書類作成の手間を削減できます。まだまだ医療の現場では多くの紙業務が残っており、業務効率の低下だけではなく、紛失や情報漏洩のリスクなども問題視されています。カルテや問診票を電子化できれば記入ミスをはじめとしたヒューマンエラーを防止できることもメリットの一つです。電子化すると病院内だけではなく、院外ともデータを共有できるため、患者さまがかかりつけ医から紹介された医療機関を利用する際も、必要な診療や検査情報の共有が可能です。

 

ビッグデータの活用

医療機関が保有している診療記録や検査結果、処方情報、特定疾患の臨床データなどをビッグデータとして分析・活用できれば、新薬の発見や疾患の早期発見、健康管理のサポート、治療方針の個別化などに役立てられるでしょう。例えば、健康診断のデータや診療データであれば個人の健康管理や疾病予防に活用でき、医療や介護サービスの向上、健康増進などに役立ちます。また、特定疾患の臨床データや医薬品の副作用データであれば、疾病の治療や新薬の開発などの研究に役立てられ、医薬品の安全性の向上に貢献できるでしょう。

 

3.医療DX令和ビジョン2030の3つの柱 [7]

ここでは、医療DX令和ビジョン2030の3つの柱を紹介します。医療DX令和ビジョン2030とは、2022年5月に自由民主党政務調査会より提言された取り組みで、日本の医療分野のデジタル化を推進することを目的に定められました。

 

全国医療情報プラットフォームの創設

全国医療情報プラットフォームとは、医療機関・介護施設・公衆衛生機関・自治体などがデータを共有できるプラットフォームです。電子カルテの情報だけではなく、予防接種情報、レセプト情報など、多彩な医療データがプラットフォームを通して共有されることで、医療や介護情報の基盤構築を進められるでしょう。プラットフォームの運用は、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会が担い、国内の医療機関の効率的な運用をサポートしてくれます。

 

電子カルテ情報の標準化

電子カルテ情報共有サービスを利用すると、医療機関や薬局間で情報を共有・交換できるようになり、情報の標準化が可能です。全国医療情報プラットフォームの元となるデータの共有基盤であり、紹介状送付サービス、健診文書閲覧サービス、6情報閲覧サービスの3つのサービスで構成されています。

 

診療報酬改定DX

診療報酬改定DXとは、診療報酬システムの更新プロセスをデジタル化し、医療機関やシステムベンダーの負担を軽減するための取り組みです。各ベンダーが共通の診療報酬算定・患者の窓口負担金計算を行うための、共通算定モジュールと呼ばれる電子計算プログラムを開発・提供することで、診療報酬改定に伴う情報更新をスピーディかつ効率的に実施できるようになるでしょう。

 

4.医療DXに関するよくある質問

Q1. 医療DXを導入することで病院にはどんなメリットがありますか?

A1. 業務効率の向上や、診療情報の共有による医療の質向上が期待できます。また、オンライン診療や予約システムの導入により、患者の利便性も向上し、結果的に経営改善にもつながります。

 

Q2. 医療DX令和ビジョン2030とは何ですか?

A2. 2022年に政府が提言した医療分野のデジタル化推進計画です。

全国医療情報プラットフォームの構築、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DXの3つの柱を中心に、医療の効率化と質の向上を目指しています。

 

Q3. 医療機関が医療DXを始めるには、まず何から取り組むべきですか?

A3. まずはオンライン予約や問診システム、電子カルテの導入など、既存業務のデジタル化から始めるのが現実的です。

段階的に進めることで、従業員の負担を減らしながらスムーズにDXを推進できます。

5.まとめ

医療業界が抱える人手不足や長時間労働の常態化、デジタル化の遅れ、病院の経営難などの課題を改善するためには、医療DXの推進が欠かせません。医療DX令和ビジョン2030では、医療分野でのデジタル化を推進するために3つの柱が設定されています。システムを利用して医療DXを推進できれば、医療業界が抱える課題の解決も期待できるでしょう。

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[1] https://www.atled.jp/wfl/article/39313/

[2] https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/22/dl/zentai.pdf

(P4 図表1-1-2 人口ピラミッド(2020年~2070年))

[3] https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf

(P56 図表2-6 業種別のDXの取組状況)

[4] https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001252707.pdf

(P56 図表Ⅲ-3_病院種別・開設者別黒字病院(令和4年度、経常損益))

[4] https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000632645.pdf

(P31  黒字病院比率)

[5] https://digikar.co.jp/articles/how-to-choice-emr/article33

[6] https://www.atled.jp/wfl/article/39313/

[6] https://www.ntt-west.co.jp/business/solution/medical_sp/article/

[7] https://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/healthcare/iryo-dx-reiwa-vision2030/column/20240530-02.html

2023年5月3日

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