
argenx BV(以下、アルジェニクス、CEO:カレン・マッセー)と株式会社テックドクター(代表取締役:湊 和修)及び国立大学法人東京科学大学(理事長:大竹 尚登)はこのほど、難病において特に自己免疫疾患を対象にしたリアルワールドデータに基づくデジタルバイオマーカー※の研究及び戦略的プラットフォームの開発を目指し産学協働の研究拠点を立ち上げました。アルジェニクスが有する自己免疫疾患の創薬に関する専門的知見・技術と、テックドクターが有するウェアラブルデバイスデータからデジタルバイオマーカーを開発する先進的技術、また東京科学大学が有する臨床フィールドや学術的知見等3者の強みを融合させることで、「医薬品+デジタルのトータルヘルスケアソリューション」の社会実装に向けた新たな取り組みを開始します。

調印式の様子。左からテックドクターの湊和修代表取締役、東京科学大学の大竹尚登理事長、アルジェニクスジャパンの後藤太郎代表取締役
自己免疫疾患は、免疫系が自らの組織を攻撃することで発症し、長期にわたって治療が必要となる慢性の疾患群であり、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、自己免疫性筋炎、全身性硬化症、シェーグレン病など多様な病態を含みます。これらの疾患はいずれも臨床症状や治療反応性には大きな個人差があり、患者さん一人ひとりの状態を適切に把握することが重要です。その希少性から一律の治療の標準化が困難であり、現状の診療は主治医の経験や専門医間の暗黙知に大きく依存しています。現在、疾患ごとにさまざまな臨床評価指標が用いられていますが、定期的な診療だけでは、受診と受診の間に生じる症状や身体機能、日常の生活の変化を十分にとらえきれない場合があります。
一方、ウェアラブルデバイスは活動量、睡眠の質、脈拍数などの生体データを非侵襲的かつ継続的に取得できることから、患者さんの日常生活における身体活動量や睡眠の変化を捉える新たな手段として期待されています。また、これらのデータと自律神経系の状態、疲労感などの自覚症状との関連を検討することで、従来の臨床評価を補完できる情報が得られる可能性があります。この点は、外来受診時という一時点の評価にとどまっていた従来の医療に、常時の日常生活における指標を活用できる可能性を示唆します。これらのデータを解析し、疾患に関連する心身の状態を示すデジタルバイオマーカーとして活用することでより精密な疾患活動性評価が可能になると期待されています。
これまでテックドクターと東京科学大学は、特定の疾患を対象にしたデジタルバイオマーカー開発の研究について協業を進めて参りました。今回、自己免疫疾患の抗体医薬開発に強みを持つ製薬企業であるアルジェニクスを新たに加えた3者による協働研究拠点の設立を行い、対象疾患を拡大すると共に創薬あるいは臨床応用での活用を目的としたデジタルバイオマーカーの研究・開発を加速します。
今回新たに設置する「アルジェニクス・テックドクター デジタルバイオマーカー協働研究拠点(拠点長・東京科学大学 医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学分野 細矢 匡准教授)」の設置期間は2029年8月31日までの3年間を予定しています。
本協働研究拠点での研究活動で得られた成果は、今後治験における評価指標や患者選択基準への応用を通じて医薬品開発の効率化に貢献することや、上市後の診療においては患者ごとの治療反応性の予測や日常的な病状モニタリングを可能にすることで、より個別化された薬剤選択・治療調整を支援する戦略的プラットフォーム(デジタルバイオマーカーの収集・解析・活用を通じて、研究開発から診療支援までを一貫して支える基盤)へと発展させていくことを目指します。
※デジタルバイオマーカー
デジタルバイオマーカーとは、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどから取得される日常的な生体データをもとに、疾患の有無や病状の変化、治療の効果を連続的かつ客観的に評価する指標です。
従来のバイオマーカーは、医療機関で一時的に測定される「点のデータ」でしたが、デジタルバイオマーカーは日常生活の「線のデータ」を継続的に取得できる点が特徴です。運動、睡眠、心拍などの指標をもとに、病気の早期発見や治療モニタリング、さらには薬剤開発における新たなエンドポイントとしても期待されています。海外では2019年頃から開発が進み、国内でも注目が高まっています。